当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります。
是非最後までお付き合いください。
では、行きましょう!
●映画『夏目アラタの結婚』の概要
●映画『夏目アラタの結婚』のおもしろさ
●映画『夏目アラタの結婚』の解説
●映画『夏目アラタの結婚』の楽しみ方
●映画『夏目アラタの結婚』の推しポイント!
●映画『夏目アラタの結婚』の惜しい点
<おススメ度>
<ポジティブ感想>
● ミステリー仕立てのラブストーリーです。
● コメディ、恋愛、サスペンス、推理もの、法廷劇などいろいろな要素がたくさん入ったエンタメ作品で楽しめます。
● 面白かったし、ドキドキしました。
● 予告編で連想されるほどグロい作品ではないので安心して観られます。(出血や殺人のシーンはあります)
● 主演2人の演技も良く、特に黒島結菜は一皮むけた感じで素晴らしかったです。
● 原作未読でも楽しめるクオリティになっています。未読の方はきっと原作が読みたくなります。
<ネガティブ感想>
● もったいないし、惜しいと感じました。
● 後半の恋愛パートに移ると、前半のサスペンスパートの内容が全ておざなりになってしまいます。ですので謎解きサスペンスを期待する人には物足りないと思います。
● 監督が描きたかったのは、きっとラストシーン。でも前半でサスペンスを散々観せられているので、なんで最後にそういう展開になるのか、いまひとつ納得が出来ませんでした。
『夏目アラタの結婚』はどんな映画なの?
児童相談所の職員と死刑囚との危険な駆け引きを描いた恋愛サスペンス映画だよ
映画【夏目アラタの結婚】の概要
乃木坂太郎の同名コミックを『ケイゾク』『TRICK』『SPEC』『20世紀少年』各シリーズなどの堤幸彦監督が実写映画化。児童相談所職員が死刑囚との獄中結婚を言い出したことから始まる危険な駆け引きを描いたサスペンス映画です。脚本は『翔んで埼玉』シリーズや『もしも徳川家康が総理大臣になったら』などの徳永友一が手がけています。柳楽優弥と黒島結菜がW主演を務め、中川大志、丸山礼、立川志らく、市村正親、佐藤二朗らが共演。上映時間は120分。レイティングはGです。
映画【夏目アラタの結婚】の評価
Filmarks 3.6p
映画com 3.7p
そこそこ高めの評価ですね。
「面白かった」という声が多いものの、次第にラブストーリー展開になっていく「堤ワールドについていけなかった」というような意見も目立ちます。
映画【夏目アラタの結婚】の興行成績
3日間の観客動員数は約8万7400人、興行収入は約1億2550万円。
公開24日間で観客動員数30.5万人、興行収入は4.3億円。
最終興収は約6億円前後となりそうで、そこそこな感じです。
本作のざっくりあらすじです
映画【夏目アラタの結婚】のあらすじ
児童相談所職員のアラタは、連続バラバラ殺人事件の被害者の子どもに頼まれ、発見されていない被害者の首を探すために、品川ピエロ”の異名で知られている事件の犯人・品川真珠死刑囚と面会する。手掛かりがほしいアラタは、面会を打ち切ろうとする真珠に対して突如結婚を申し込む。真珠の言動に戸惑い翻弄されながら、1日20分だけ許される面会を続けるアラタ。そんな彼に真珠は「ボクは誰も殺していない」と衝撃の告白をする。やがて控訴審が開かれることになるのだが。
といったような筋書きです。
どんな俳優が出ているの?
主演2人の演技は良かったよ。特に黒島結菜は振り切った演技で一皮むけた感があるね
魅力的なキャストと演技
柳楽優弥と黒島結菜の演技は良かったです。
黒島結菜はサイコキラーの死刑囚役を生き生きと演じていました。振り切った演技がとても良かったです。歯並びが悪い役なので、長期間マウスピースをして話す練習をしていたらしいです。それでも話しにくそうなのは可哀想でした。
劇中で女子高生のカッコをしてましたが、舞台挨拶で本人も「まだいけるかも」と言ってました。
柳楽優弥は特徴のある役者ですが、いつもの柳楽優弥の芝居で意外性はありませんでした。
丸山礼は映画初出演とは思えない演技でした。素人っぽさは残るものの、とても頑張っていたと思います。
佐藤二郎もいつもの二郎さんでした。いつものコメディ演技でちょっと気持ちが悪い役をいつもの感じでやってました。
以下は、一部ネタバレを含む内容になりますので、ご注意ください。
この映画にはどんなテーマが込められているの?
オリヴィア・ロドリゴの「vampire」にシンクロさせた、バンパイヤに魅せられる男の姿を描きたかったんだと思うよ
映画【夏目アラタの結婚】のテーマ
エンドロールでオリヴィア・ロドリゴの「vampire」(2023年)が流れて、和訳字幕も出ます。本作のための楽曲だと勘違いするくらいマッチしています。この歌詞には、女性の不安定で危うげな愛が描かれていて、真珠がアラタを想う“歪な愛”を連想させます。つまり本作で堤監督がやりたかったのは、この曲にシンクロさせた真珠の初恋物語であり、真珠とアラタの赤い糸の話なのです。
前半はミステリーサスペンス、中盤は裁判劇、後半は恋愛ものと進むにつれて色合いが変わっていくのですが、監督が本当に描きたかったのは最後のラブストーリーです。アラタの目線で全てが語られるシナリオになっているので「バンパイヤに魅せられる男」が本作のテーマとなっているのだと思います。ストーリー的には「あのエンディング」にしないという選択もあったのでしょうが、監督にとってはあれが必然。あれこそがやりたかったことなのです。
監督はレッドカーペットのインタビューで「あまり悩まずに撮影できたが、編集は凄く悩んだ。というのも2人の主人公たちの心情の変化とか周りのみなさんの言葉には出ない気持ちとかをどう映像化するのか。微妙なさじ加減で全部変わってくる。その編集が難しかった」と語っています。「vampire」にいかにシンクロさせるかに悩んだんだと思います。
この映画を観て、どこが良かったの?
特に前半は先の展開が読めなくて面白かったよ
映画【夏目アラタの結婚】のポジティブ感想
原作は12巻ありますが、よくまとめたと思います。展開は二転三転していきます。特に前半は先の展開が読めません。
評判より面白かったしドキドキもしました。鑑賞中は「これ、面白いじゃん」と思いながら観ていました。
アクリル板越しの面会シーンは光の使い方も含めてとても良かったです。ガラスの使い方、ガラスに映り込んだ時の登場人物たちの心情の変化など表現が上手いです。ガラスを割るシーンも緊迫感がありました。
筆者が一番グッと来たのは、真珠が傍聴席に飛び出すシーンです。裁判所のあの柵をジャンプして飛び越えるというシーンは、なかなか無いと思います。ここは意外性がありました。ファンタジーではなく現実だったので驚きました。
真珠の匂いを嗅ぐ仕草が、エンディングに効いてくるというのも良かったです。
一時的に真珠を拘束する法的根拠が無くなったことをアラタが裁判長に詰め寄るシーン。裁判長の「ない」は、「2人を隔てるものはない」と言っているように感じました。
拘置所の面会システムが、大病院の呼び出しみたいになっているのは初めて知りました。
残念なポイントもあったの?
堤監督が描きたかった「バンパイヤの初恋成就物語」への転回が急で、気持ちがついていけませんでした
映画【夏目アラタの結婚】のネガティブ感想
コメディ、恋愛、サスペンス、推理、法廷劇、会話劇と要素が多く入っているので、やりたいことがとっ散らかった印象になってしまっています。首の在処を探す目的から、死刑囚を無罪にする目的に変わり、最後はラブストーリーの成就という目的に変わります。テーマがどこにあるのか、とても分かりにくい構造になってしまっています。堤監督らしいです。特に後半は恋愛に全振りして、本人がカラクリを全て告白してしまうので、前半のミステリー要素や推理要素や色々探っていたアラタの存在意義が全て吹っ飛んでしまいます。結局何がやりたかったの?となってしまいます。
前述したように堤監督が描きたかったのは、「バンパイヤの初恋成就物語」です。ラブストーリーであることは、最後になってやっとわかるので、メッセージ性が低いと感じてしまいます。エンディングは原作改変の堤アレンジです。中盤辺りまでは原作に出来るだけ寄り添っておいて、後半に自分がやりたかったことをガッと出してきた感じでしょうか。
ここまでやるならむしろ13年後を描けば良かったのではと思ってしまいます。
黒島結菜はナイトプールイベントで「ジャンルに拘らない、新ジャンルの映画」と話していました。こう言うしかないよなぁと思いました。
堤アレンジのエンディングには蛇足感がありましたが、他にも余計なシーンや台詞が散見されます。
弁護士と主人公との別れ際の台詞はわざとらしくていりませんし、最後のハンカチシークエンスもいりません。説明し過ぎです。匂わせだけで十分なのです。
裁判所で真珠を見た死刑囚マニアの二郎さんに「カワイイ」と言わせるのもしつこいです。そのなものは見ればわかります。台詞ではなく、画で見せて欲しいです。この辺り非常にテレビ的です。
真珠の「胸も小さいし」という台詞も必要ありません。いちいち俳優の体型を持ち出さなくてもいいです。「胸が小さい女性を好む = ロリコン」というのも凄く陳腐な発想だと思います。これだけで作品の品位が落ちます。昭和世代の年寄監督の悪癖です。もし原作にあったとしてもカットすべきです。
真珠からアラタに「エッチしよう」と誘っておいて、セックスを拒むシークエンスは、「純愛 = 純潔」という単純な思考が垣間見えて気持ち悪いです。
アラタが裁判官に真珠は今法的に自由だと言わせるシーンもいらないですね。なんでアラタが裁判官に向かってしたり顔で法を語っているんでしょう。公正に判決を下しただけの裁判官に向かって、上から目線で語ります。アラタは言い負かしてやったという顔をしていましたが、裁判官はアラタのことを知らないはずです。凄く違和感がありました。
なぜアラタは突如結婚しようと言ったのでしょう。いくら真珠の気を引くためだとしても、あまりに唐突で彼の動機が腑に落ちません。ここで観客の気持ちが置いていかれます。
このシーンに説得力を持たせることが、本作にとって最も重要だと思うのですが、そこに至る背景やアラタの心理描写が不足しているので感情移入出来ず、その後もアラタの行動に共感出来ません。12巻をまとめたので、登場人物は深掘りされていない印象です。
死刑囚と獄中結婚出来るという知識さえ、一般人は知らないと思います。死刑囚マニアの二郎さんに説明させてから、結婚を言い出すならまだ分かりますが、そういう順番ではありません。情報を聞き出す目的とはいえ、獄中結婚という極端な手段を取る必要性が感じられないので、彼のモチベーションにワクワクもしません。
弁護士が犯人か教唆犯だと思っていたので予想が外れました。せめて真犯人は当然いると思っていました。
結局彼女が全ての犯人だということなら、観客はどこに気持を持っていけばいいのでしょう。同情すべき事情はあるにせよ、4人を殺していいということにはなりません。
殺された3人の男たちが真珠に出会った経緯もわかりません。殺した動機も「楽にしてあげた」というだけです。父親を最初に殺して、他の男達を順番に殺したのであれば、ただのサイコキラーであって、同情の余地も感情移入も出来ません。しかも最後まで真珠は反省も改心もしている様子はないので、シリアルキラーのままだということになります。そんな相手と結婚するのであれば、もっとアラタが闇落ちしたという描写を強調しないと、面白味が出ないと思います。
結局当初の目的だった被害者家族に託された「首の在処を探す」というミッション&ミステリーサスペンス要素がおざなりのままにサラッと流されて終わっています。終盤に被害者の息子も出てきません。言葉で説明されて終わりです。被害者家族の話から始まったはずなのに、被害者家族をおなざりにしてオールハッピーなのはどうかと思います。これでは不完全燃焼感は残ります。
堤さんの他の作品にも時折みられるように、本作も広げた風呂敷を畳みきれていないという印象です。演出も画作りもテレビ的に感じます。
真珠がなぜピエロの格好だったのかも釈然としません。化粧ミスは口紅だけで、後は意図的にやっているはずです。ほぼジョーカー、若しくはペニーワイズです。つまり真珠は純真なサイコキラーです。殺すだけならまだしもバラバラにするのは、完全な猟奇殺人です。死体を切断したのも、その一部だけを埋めた理由もよくわかりません。父親を最初に殺しているので、父親の指示だったというのは嘘です。死体の一部を新築の家に埋めるというのも愉快犯的で、殺人を楽しんでいるふしがみられます。見知らぬ男性3人を殺した理由は、「可愛そうだったから」「本人が望んだから」という真珠の主観のみ(語られた内容のみ)です。真珠の本当の気持ちは、アラタとの出会い以外は全く描かれていないのです。
本作は真珠を同情すべき純粋な人物として描き、観客に感情移入させる構造になっています。しかし彼女はサイコキラーでしかありません。サイコパスが同情すべき境遇でサイコキラーになったのであれば、やはりジョーカーやペニーワイズと同じです。全く爽やかな話ではありません。
どんな人にも更生の機会があるのは良いことですし、罪を償って出所した後ならまだ分かりますが、更生する前に普通の一般男性がサイコキラーである彼女を愛すというのは、流石に無理があります。赤い糸で結ばれていると考えていたのは、元々は真珠だけですから。
原作改変してラブストーリーをメインにするのであれば、真犯人は別にいたという変更にするか、出所した13年後を描くという風にした方が良かったと思います。
真珠が真犯人というオチでは、感情移入は出来ません。もしあなたが本作に納得しているのであれば、それはとても危険です。猟奇殺人者に同情するのは、完全に真珠(堤監督)の手練手管に取り込まれている証拠です。
真珠はアラタに幼少時に出会っているので、出会ってから愛を知ったというのも違う気がします。
駆け引きじゃなく彼女は最初から本気だったというオチもどうなのかなと思います。
脚本はコメディが得意な人が担当していますが、印象的な面白シーンはありませんでした。狙いであるオフビートな笑いになりきっていないと感じました。
裁判長も死刑囚マニアもあまりいる意味がありません。存在があとで効いてきませんし、後半出てくることもありません。裁判長は「ない」を言うため、死刑囚マニアはただ説明するためにいる人で終わっています。
アラタが自分で証拠を掘り起こしたら、警察は信じないでしょう。こういうところで、観客の気持ちが離れてしまいます。
歌が上手いという説明はありますが、鼻が効くという説明はありません。歌のフリより、鼻のフリを入れた方が良かったのではないかな。歌が上手い設定もあまり有効に使われていませんでした。
いくらなんでも子役と黒島結菜が別人過ぎます。もう少し寄せないと。
裁判パートは物足りません。後半は恋愛パートが被っているので、特にそう感じました。
死刑囚マニアと同僚以外は、アラタが真珠と結婚しても誰も反応しません。世間も父親を殺された少年も反応しません。普通ならアラタの周りは記者だらけになるはずです。裁判所の傍聴人もスルーです。非常にご都合主義が目立ちます。
ポスターでは真珠はウエディングドレス姿です。本編は白無垢です。ポスター詐欺でしょうか?
冒頭のバツ印の意味は?わかりませんでした。舞台挨拶で監督が「東京拘置所を上から撮るとバツになる。それをストーリーの縦軸としてビジュアルイメージでやったということです」と話していました。やはりよくわかりません。
映画『侍タイムスリッパー』のおすすめポイントまとめです
映画【夏目アラタの結婚】の推しポイントまとめ
ミステリー仕立てのラブストーリーです。コメディ、恋愛、サスペンス、推理もの、法廷劇などいろいろな要素がたくさん入ったエンタメ作品で楽しめます。予告編で連想されるほどグロい作品ではないので安心して観られます。(出血や殺人のシーンはあります)
主演2人の演技も良く、特に黒島結菜は一皮むけた感じで素晴らしかったです。
面白かったし、ドキドキもしました。でももったいないし、惜しいと感じました。
後半の恋愛パートに移ると、前半のサスペンスパートの内容が全ておざなりになってしまいます。ですのでサスペンス要素を期待する人には物足りないと思います。
結局監督が描きたかったのは、ラストのシーンなんだと思います。でも前半でサスペンスを散々観せられているので、なんで最後にそういう展開になるのか、いまひとつ納得が出来ませんでした。
ですが、原作未読でも楽しめるクオリティにはなっています。未読の方は原作読みたくなりますよ。
いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。