当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります。
是非最後までお付き合いください。
では、行きましょう!
『マッドマックス フュリオサ』のおすすめポイント
『マッドマックス フュリオサ』ってどんな映画?
凄そうなポスター画だけど、一体どんな映画なの?
2024年のオーストラリアの人気アクション映画「マッドマックス」シリーズの第5弾。前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のスピンオフにして前日譚です。日本では公開は2024年5月31日です。前作の公開が2015年6月だったので9年ぶりの新作となります。原題は『Furiosa: A Mad Max Saga』。上映時間は148分と長めです。
監督はシリーズ創始者にして御年79歳のジョージ・ミラー。出演はアニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワースなど。
前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、米アカデミー賞で10部門にノミネートされ、6部門を受賞するなど高い評価を獲得し、世界中でヒットしました。
本作は、米ロッテントマトでトマトメーター90%、オーディエンス89%とほぼ同じ。Filmarksで4.1p、映画コムで4.0pと高評価を得ています。
ただなぜか本国での興行はかなり苦しいようです。日本ではいいみたいですが。
フュリオサは前作の実質的な主人公。マックスは寧ろ狂言回しに近い感じでした。その人気キャラのスピンオフ。主演は筆者が好きな俳優。当然期待が高まります。
ストーリーはどんな感じ?
幼い頃に母を殺され自身を連れ去ったディメンタスに、フュリオサが復讐を果たし、シデタルの英雄→大隊長→伝説になるまでの話です。つまりストーリーの中心は復讐物語です。その過程で少女だったフュリオサが伝説の大隊長になる姿が描かれます。
とにかく情報量が多い作品です。
前作はほぼ行って帰るだけの話で、ストーリーと呼べるようなものはほとんどありませんでしたが、本作はその世界観を補完し厚みを増すことに成功しています。イモータン・ジョーや周辺のキャラクター、砦の中の様子、フュリオサの過酷な生い立ちや腕を失った経緯などがよく分かります。
前作はわずか3日間の話でしたが、本作はフュリオサの15年間に渡る物語となっており、アクションだけに振り切った前作と比べて、ストーリー重視の作品になっています。
『マッドマックス フュリオサ』の魅力
この映画の魅力を教えて?
ガソリンエンジンこそが本シリーズの最大の魅力ですが、本作においてもそこはしっかりと踏襲されています。画面からガソリン臭さが溢れています。
前作に引き続き、生身の人間の肉体を感じさせるアクションの連続、ド派手な音と画面は顕在です。大迫力と臨場感と疾走感満点のバトルが画面いっぱいに繰り広げられます。出来るだけ大きな画面と良い音響で観てほしい作品です。スマホで観るなんて勿体ない。
主人公のフュリオサを演じたアニャはカッコいいよね。ゴマも大好きだよ
アニャは期待通りの素晴らしさでした。正に目ヂカラお化けです。執念が目だけで伝わって来ます。本作のフュリオサの台詞はわずか30個に絞られていて、彼女は目線や行動だけでフュリオサの人物像を演じているところに注目です。スタイルがいいので、キメシーンが映えます。前作でフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンも素晴らしかったですが、アニャも“フュリオサ”に相応しい演技でした。
他にはどんなキャストが出演してるの?
ヴィランのディメンタスを演じたクリス・ヘムズワースも良かったです。ソーでお馴染みの軽妙なキャラが本作でも活かされていました。ディメンタスのちょっとした瞬間に見せる切ない表情や仕草がキャラに深みを与えていました。
フュリオサの子供時代が長かったです。いつになったらアニャが出てくるのかと思っていたのですが、この若き日のフュリオサを演じたアリーラ・ブラウンが非常に素晴らしかったです。アリーラからアニャへの入れ替わりが見事で、気付かぬうちにいつの間にかチェンジしていました。このアリーラはジョージ・ミラー監督の前作に当たる『アラビアンナイト 三千年の願い』にも出演していました。アニャに負けないくらいの目力でした。今後も注目です。
フュリオサの母メリー・ジャバサを演じたチャーリー・フレイザーがメチャメチャカッコ良かったです。
そのジャバサと共にフュリオサを助けようと駆けつけるブロンドヘアの戦士ヴヴァリーニは、クリヘムの妻であるエルサ・パタキーが演じてます。因みに彼女はディメンタス一派のメンバーの一人、ノートンとしても登場してます。夫婦共演です。
前作でヴィランのイモータン・ジョーを演じた名優ヒュー・キース・バーンは2020年に亡くなりました。本作のイモータン・ジョーはラッキー・ヒュームが演じてます。彼も二役で、ディメンタス一派に属する片目を失ったリズデール・ペルも演じてます。
エルサもラッキーも両極端な役を演じ分けていて驚きです。
※ この後はややネタバレに触れる部分がありますのでご注意ください。
『マッドマックス フュリオサ』のテーマとポイント
この映画は単純なアクション映画なのかな?
本作はゴリゴリのアクション映画ですが、その中には「階層社会」や「搾取構造」、「フェミニズム」的な視点が盛り込まれていて、現実社会に対する様々な批評的な視点を感じます。
本作に出てくる女性はワイブス(子産み女)やミルキング・マザー(乳搾り女)にされ、自由がなく、尊厳が奪われています。
前作のヴィランであるイモータン・ジョーは男根主義の象徴であり、家父長制を体現している者です。ディメンタスも有害な男性性の象徴として描かれています。その対となるのがフュリオサです。
このように本作は父権主義的男性社会のおぞましさを描いた作品ですが、本シリーズの魅力である大排気量のV8ガソリンエンジン車、モンスターバイク、巨大なウォータンクなどはまさに男性性の象徴です。ビジュアルとテーマが真逆の主張をしている所が大変面白いです。
逆に父権主義的男性社会においては、男性支配者にも多くの苦しみがあるということも描かれています。シデタルの支配者であるイモータン・ジョーは既に年老いており、無理して強そうに見せているのが垣間見えます。胴体に装着する半透明なカバーは筋肉のフェイクです(あのデザインは武士の甲冑から来てるんだと思います。きっと日本人のアイデアです)。そのジョーに笑顔はありません。支配者で居続けるのは実に大変そうです。
またディメンタスも前半こそいい調子ですが、後半になると組織の支配に失敗して辛そうです。
面白いのは、シデタルでは「出世すれば性別は関係なくなる」という点です。幼少期のフュリオサは本来の性別を隠して生きなければなりませんでしたが、警備隊長になってからは恐らく女性であるということがバレているにも関わらず、誰もそのことに触れません。認めてるんですね。こういう所も面白いと思いました。
「緑の地」での果実を摘むシーンや母親が磔になるシーン、ヒストリーマン(賢者)がフュリオサを暗黒の天使=「ヨハネの黙示録」の第五の騎士と例えているシーン(調べてみると、実際の「ヨハネの黙示録」には第四の騎士までしか存在していないそうです)など、本作にはキリスト教的なモチーフが度々登場します。
ディメンタスは手綱で操作する3台のモンスターバイクを駆っていますが、あれは如何にも古代ローマのチャリオットがモチーフです。名作『ベン・ハー』を連想します。『ベン・ハー』も非常にキリスト教色が強い作品でした。(因みにこのディメンタスのチャリオットは実在するらしいです)
本来なら描きそうなことを描かないのも本作の特徴です。普通のアクション映画なら絶対描くだろう「40日戦争」はナレーションだけであっけなく済ませます。フュリオサの母の最期もジャックの生い立ちや最期も直接見せません。フュリオサとジャックのラブシーンもありません。この辺の省略の仕方も独特で面白いです。
本作はシリーズ物だけど、過去作の予習は必要?
筆者は本作鑑賞後に前作である『マッドマックス 怒りのデスロード』を観たくなって、配信で再鑑賞しました。名作『駅馬車』の現代版といった感じです。真のヒーローは黙って去るみたいな所も西部劇的ですね。『手錠のままの脱獄』オマージュなどもあって楽しめます。『怒りのデスロード』はめっぽう面白いです。名作といっていいでしょう。まだ観ていない方はぜひ観てください。おすすめです
本作を観たら、きっと前作を観たくなります。ストーリーは続いています。時系列では『フュリオサ』の後に『怒りのデスロード』が来ますが、鑑賞順はどちらからでもいいと思います。
筆者はこの機会に旧3部作もすべて配信で観直しました。
記念すべき第1作目の『マッドマックス』は、午後ローにピッタリなB級作品です。世界が破滅する前が舞台となっていますので、『マッドマックス フュリオサ』とはテイストが全く違います。でもシリーズの基本となる(車、バイク、復讐、狂人)はこの作品で既に出てきますし、内容的にも実は本作に近いことをやっています。現シリーズの世界観は『マッドマックス2』からになります。
様々な作品に影響を与えた『マッドマックス2』は名作と呼ばれています。日本ではその世界観が「北斗の拳」に影響を及ぼしたことでも有名です。前作に比べて予算も10倍に増えていますので、カーアクションも派手になっています。プロットは本作にも引き継がれています。
3作目の『マッドマックス /サンダードーム』はアメリカ資本が入った為かかなりアメリカナイズされた印象です。後半は同年に劇場公開された『グーニーズ』に似た展開が出てきます。ですが「緑の地」に似た場所や「ウォーボーイズ」の見た目をした少年が出てくるなど、本作に通じる部分も見られます。
過去作の予習は不要ですが、復習はおススメします。旧3部作のストーリーが本作に直接繋がっている訳ではありませんが、観ると過去作でやっていることを本作でも引き続きやっているということがよく分かります。まだシリーズを観たことがない方はぜひ観ることをおすすめします
残念だったところ
ここはイマイチだったなぁというところはある?
アクション中心の前作から、本作はストーリー中心の作品にシフトチェンジしています。筆者は自然に前作の様な派手さを求めていたので、やや肩透かし感がありました。
前作には笑いの部分やディテールに凝った大仰なバカバカしさがありましたが、本作は復讐物語の為か前作で良かった部分が減少している印象です。派手さも前作にやや劣ります。
前作は観たことがないものを見せてくれた感じが凄かったのですが、リブート2作目である本作はどうしても“見たことがある世界”になってしまっています。感覚的に見劣りするのは致し方無いところでしょうか。
もっとおバカで悪ふざけ感満載なド派手で強い画が欲しい気持ちはありました。前作は絶妙なコメディシーンも魅力でしたが、そういう雰囲気が全く無かったのは残念でした。
クライマックスのディメンタスを追い詰めるシークエンスは冗長でした。ラストはクリヘム喋り過ぎ。ソーじゃないんだから。もうちょいハードボイルドでいって欲しかった。
その他の豆ポイント
その他に注目ポイントはある?
● フュリオサ&ジャックカップルについては、無駄なラブシーンが無くて良かったです。それによって絆の強さをより感じました。
● フュリオサの星図を彫った左腕が無くなった時点で、(前作で)緑の地に帰れなくなることが暗示されているのは上手いなと思いました。
● 本作はマッドマックスシリーズですが、マックスは正式には出て来ません。ですが後半で瀕死の重傷で砦に辿り着けなかったフュリオサを砦まで引きずっていく男が登場します。恐らくあれがマックスだったのでは?
● 砦の穴の巣窟で蛆虫を育てる老婆が、フュリオサの腕の傷にウジを這わせていましたが、あれが「マゴット療法」(ウジに壊死組織を食べさせて汚染した組織をきれいにし治癒を促すという古くからある治療法)になって、大怪我ながら比較的早期に治ったということみたいです。
● 前作の段階でフュリオサの設定、プロットはあって、脚本も既に出来ていたそうです。シャーリーズ・セロンもそれを読み込んで演じたらしいです。
● 元々はアニメで製作が計画されていましたが、それが頓挫して実写になったそうです。
● 2011年にプロデューサーが、続編の脚本はほぼ完成していてトム・ハーディ版の「マッドマックス」は3部作になると話しました。2015年には次回作のタイトルは『Mad Max: The Wasteland』であると発表したそうです。この『Mad Max: The Wasteland』はトム版マックスの前日譚になるみたいですね。
脚本は出来てる。後はジョージ・ミラー監督の健康状態次第という感じです。前作は27年ぶり、本作も製作に9年かかってますからね。果たして出来るのか?
『マッドマックス フュリオサ』のまとめ
ということで、おススメです。
大変面白いです。やっぱりこの手の映画は音響が大事です。
今回もカーアクションに工夫が凝らされていてキレキレでした。ストーリー重視で、前作の世界観を補完するような内容で楽しめます。
キャストも良く、特に主役のアニャはカッコよくて素晴らしかったです。持ち前の目ヂカラが最大限に活かされていました。
ただ並べてみると個人的には「前作は超えていない」という印象です。前作の良かった所がやや後退してしまっています。
クライマックスのシークエンスは冗長でした。最後のオチはやり過ぎですが、面白かったです。
ズバリおすすめ度は?
おススメ度 (★ 4個/5個中)
いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。