当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります。
是非最後までお付き合いください。
では、行きましょう!
● 映画『十一人の賊軍』の概要
● 映画『十一人の賊軍』の見どころ
● 映画『十一人の賊軍』のテーマ解説
●映画『十一人の賊軍』の推しポイント!
●映画『十一人の賊軍』の豪華俳優陣の良かったところ
●映画『十一人の賊軍』のこぼれ話
感想については、あくまで個人的な見解、考察ですのでご容赦ください。
一部ネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。
こちらではポジティブな内容を中心に扱っています。もっと正直な感想をご希望の方はこちらをご覧ください。
『十一人の賊軍』の〈問題点と残念な所〉については、こちらの記事をご覧ください
<おススメ度>
★★★☆☆ 3.0/5
<ポジティブ感想>
● 東映集団抗争時代劇を現代に復活させるという目標のもと、昭和の名脚本家 笠原和夫が残したプロット(ストーリーの要約)を現代に蘇らせたというのはアツいです。
● 豪華な俳優の熱演が素晴らしく、特に仲野太賀の最後の立ち回りが良かったです。
● 社会的弱者をメンバーにして、ラストまで繋げる展開は良かったです。
<ネガティブ感想>
● 一定の面白さはありますが、不満点の方が多かったです。エンタメとしては中程度といった感じでした。
● プロットは面白いのですが、設定にアラが多く、映画としての仕上がりは今ひとつでした。
● キャラクターが深掘りされないので感情移入出来ず、肝心の戦闘シーンもバリエーションや工夫が足りず、面白味に欠けました。
● 照明や撮影が悪く、画面が暗くて俳優の顔も見えず、誰が何をしているのかわからないシーンが多くてイライラしました。
● 砦と城を入れ替えるカット割りや編集も良くなかったです。
● 終盤までテンションが上がらず、入り込めませんでした。途中であくびも出ました。
『十一人の賊軍』の評価
Filmarks 3.8p
映画.COM 3.6p
多くの方が高めの評価をつけています。
『十一人の賊軍』の興行収入
予算は約10億円超。公開376スクリーンで、初登場4位。
初日から3日間で観客動員数 7万9000人、興行収入 1億500万円を記録しました。公開から4日間の累計成績は観客動員数10万人、興行収入 1億4100万円となっています。
そこそこ入っているという感じでしょうか。
『十一人の賊軍』はどんな映画なの?
罪人が活躍する史実を基にした時代劇アクションだよ
『十一人の賊軍』の概要
1868年に起こった日本近代史上最大の内戦である戊辰戦争の最中。新政府軍(官軍)と対立する奥羽越列藩同盟(旧幕府軍側)に加入していた新発田藩による、同盟軍への裏切り(=新政府軍への寝返り)の史実を基にした時代劇アクションです。
官軍を足止めするために、侍と10人の罪人が藩の令により決死隊となり、壮絶な戦いに身を投じる姿が描かれます。
『仁義なき戦い』シリーズなどで知られ東映黄金期の礎を築いた名脚本家・笠原和夫が1964年に執筆した幻のプロットを、60年の時を経て映画化した作品。
2024年『碁盤斬り』や『極悪女王』(ネットフリックス配信作品 : 製作総指揮)で話題になった白石和彌が監督を務めます。
山田孝之と仲野太賀がW主演を務め、その他に尾上右近、鞘師里保、千原せいじ、岡山天音、佐久本宝、野村周平、吉沢悠、西田尚美、玉木宏、阿部サダヲ、音尾琢真、一ノ瀬颯、ゆりやんレトリィバァ、ナダルなどの豪華キャストが共演しています。
舞台挨拶は登壇人数が多く、見た目にもとても華やかでした(男性が多かったですが)。
上映時間は155分です。
それほど長さは感じませんでしたが、結構長尺な作品となっています。
レイティングはPG12です。
かなり残虐なシーンはありますが、PG-12程度のゴア描写に収まっています。
『十一人の賊軍』のあらすじ
江戸幕府から明治政府へと政権が移り代わる激動の時代だった1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で戊辰戦争が起こっていた。
旧幕府軍の奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩(現在の新潟県新発田市)だったが、実は官軍に寝返ることを画策していた。そんな折、同盟軍から執拗に兵を挙げるように要請が来るが、家老の溝口はのらりくらりと誤魔化していた。しかし進行する官軍は、間もなく新発田に迫ろうとしていた。同盟軍と官軍の鉢合わせすれば、城下が戦場になってしまう。最悪の事態を避けるため、溝口は峠の砦で官軍を足止めする作戦を立てる。
砦を守る決死隊として、死罪として捕らえられていた10人の罪人と鷲尾をはじめとした数名の武士が集められる。勝てば無罪放免、負ければ死。多勢の官軍を前に、寄集めの賊軍たちは砦を守り抜き、生きて帰ることができるのか。新発田藩の命運を握る壮絶な戦いが今始まる。
というような筋書きです。
『十一人の賊軍』はどういう経緯で作られたの?
60年前に笠原和夫という人が書いたプロット(ストーリーの要約)を白石監督が見つけて映画化したんだよ
製作の経緯
1964年に脚本家・笠原和夫が「十一人の賊軍」のプロット・第1稿の脚本を書き、東映で検討会議用の本読みに挑みました。当時はコピー機など無いため、執筆した原稿を直接脚本家が会議で読み上げるという方法が一般的でした。笠原が脚本を読み上げていた途中で、当時の東映京都撮影所所長であった岡田茂(後の東映社長)が「結局その話は何人生き残るんだ」と口を挟み、笠原が「最後には全員死にます」と答えると、「そんな話はだめだ」と却下されます。笠原は激怒し、その場で1冊しかない350枚もの原稿(脚本)を破り捨てたといいます。しかしプロットだけは残されていたのです。
どういう経緯を辿ったのか、なぜか2015年頃にその笠原のプロットがキンドルに出されていたのを、白石監督が発見し、直ぐ様購入。自身で当時東映のプロデューサーだった紀伊宗之に本作の企画を持ちかけ、東映での映画化、製作がスタートしたということです。
“東映実録シリーズ”復活を目指したのが『孤狼の血』でしたが、本作は“東映集団抗争時代劇”を現代に復活させたという触れ込みになっています。
『十一人の賊軍』のテーマは?
下層で虐げられてきた人たちが、生きるために奮起する話になっているよ
『十一人の賊軍』のテーマ
なつの言葉に触発された政が「虫けらみたいに死んで溜まるか。俺は生きてやる!」と叫ぶシーンがあります。本作のテーマはここにあると感じました。
このドラマは現代の格差社会を彷彿とさせ、日本が抱える社会問題とシンクロするように感じます。
インタビューで白石監督は「名もなき人びとが犠牲になっている。その中でどう生きるか。どういう行き方をするか。そういう物語を活劇として作った。名もなき人びとの魂の叫びと生き様を観てほしい」
「ラストについてはプロットから改変している。時代が変わるときに、誰が生き残って未来を見ていくのか。この作品のヒロイックさ、物語の強さは笠原さんにしか思い付かなかったものがある。僕らはそれを信じて、今の時代へのメッセージを込めた」と語っていいます。
俳優陣は豪華だけど、演技はどうだったの?
演者はとても熱演だったよ
キャストと演技の良かったところ
● 白石監督は、俳優の熱演を引き出すのが上手い監督だと思います。本作の演者はとても頑張っていましたし、熱量も伝わってきました。
● 仲野太賀は素晴らしかったです。彼はアクションをやったことがなかったので、殺陣も素人でした。最初のアクション練習の時は、他の演者と比べてかなり酷かったそうです。しかし見学に来ていた監督に「ちゃんと仕上げますから」と約束し、あのラストの大立ち回りを演じきりました。
● 山田孝之は流石の存在感でした。
● ヒロインのなつ役の俳優は「演技はいいけれど今ひとつ華がない。有名じゃない役者なのかな」と思って観ていましたが、エンドロールで元モーニング娘の鞘師里保だったと知り驚きました。鞘師のことは以前から知っていましたが、全く気付きませんでした。アイドルのオーラを消して、演技をしていたのだとわかり感心しました。
● 槍術使いの老武者、爺っつぁんを演じた本山力は、圧巻の殺陣でした。この方、東映剣会所属の俳優で、白石監督の『碁盤斬り』や話題の『侍タイムスリッパー』にも出演しています。本作では、迫真の立ち回りが印象に残りました。この方だけ殺陣の身のこなしが違います。本物は説得力があるなと感じました。
● 辻斬を演じた小柳亮太は、豊山の四股名で時津風部屋に所属した元大相撲力士です。体格を活かした演技が、印象的でした。撮影現場でちゃんこを振る舞ったそうです。
● ノロを演じた佐久本宝は、最後まで佐久本宝だとわからない程化けていました。
● 赤丹を演じた尾上右近も、達者な演技と台詞回しで盛り上げていました。
● 家老の溝口を演じた阿部サダヲは、何を考えているのかわからないサイコパスっぽい雰囲気が役に合っていたと思います。
● 坊主の引導役の千原せいじは悪くありませんでした。いつもの千原せいじがいるような自然な感じでした。
● 官軍の将にナダルが出てきたのには驚きましたが、顔つきは時代劇向きだと思いました。決して上手いわけではありませんが、一生懸命やっているんだなということは伝わりました。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』はどこが良かったの?
泥臭さが強調されたリアリティのある演出が良かったよ
ポジティブ感想
● 国家を揺るがす権力闘争という時代の渦に巻き込まれながらも、その中で名もなきアウトローたちが奮闘する物語となっており、全体的には見応えがある作品に仕上がっています。
● 白石監督の色が出ていると感じました。
● 物語が単純な勧善懲悪でないところも良かったです。正義も悪も曖昧なのは、リアルでいいと思いました。
● 演者の皆さんは熱演でした。特に仲野太賀による、終盤の立ち回りは迫力が漲っていて素晴らしかったです。
● 戦闘シーンにおいては、大砲や焙烙玉(ほうろくだま)、オイルなどを使った爆発シーンが多く、画面の景気がいいです。
● 首や腕の切断、血しぶき、肉片飛び散りとグロ描写をしっかりと入れて、大人向けの映画に仕上がっています。
● 殺陣は美しさより泥臭さが強調され、リアリティ重視の演出でした。
● 知的障害者や女性など社会的弱者がメンバーに入っていて、彼らがちゃんと活躍し、弱者が救われ、生き残るという展開は非常に良かったと思いました。しかもノロとなつは、砦で最も役に立ったとも言え、生き延びる権利があると感じたので納得感がありました。聾唖のさだ(政の女房)を救うラストの展開も良かったです。
● 妻の元に帰りたいだけの男が主人公のひとりという所は、現代的だと感じました。
● 賊軍や町民の衣装が汚れ、くたびれ感がしっかりあったところは良かったです。
『十一人の賊軍』の〈問題点と残念な所〉については、こちらの記事をご覧ください
他にも面白い話はある?
ロケは過酷な環境で大変だったらしいよ
こぼれ話
● 砦のロケ地は千葉県の鋸南町です。ロケはかなり過酷を極めた中での撮影だったと各キャストが語っています。現場が山の上なので、現場に行くまでが大変。さらに暑い、寒い、大雨、長い、眠いと体力勝負の厳しい現場だったようです。
予算の関係かロケ弁当もかなり粗末だったらしいですが、そんな環境でも俳優たちは文句を言わなかったそうです。逆に芸人の方たちはいろいろと文句を言って、みんなのガス抜き役になっていたようです。
ロケ地の周辺は田舎でホテルもないので、山田孝之が自分で貸別荘を借りて、キャストの皆さんに開放していたそうです。そのような献身的な行為もあり、出演者のチームワークはよく、キャスト同士でバカ話ばかりして、撮影を乗り切ったそうです。
● コロリ患者の斬首シーンで、斬首される人の中にカメオ出演があります。探してみましょう。撮影が終わるまで白石監督は知らなかったそうです。阿部サダヲも知らなかったけれど、首を落としながら何となく「これ知ってる人だぞ」と思っていたそうです。
● 千原せいじは本作の撮影の後、2024年5月に本当に出家して、千原靖賢(せいけん)という名の天台宗の和尚(お坊さん)になっています。御経を読むのは、撮影時より今の方が上手いそうです。
● 小説家・脚本家の冲方丁の書き下ろしのノベライズが発売されています。内容は映画とは少し違うようです。
映画『十一人の賊軍』の良かったポイントまとめです
映画『十一人の賊軍』の推しポイントまとめ
東映集団抗争時代劇を新たなステージで展開するという目標のもと、昭和の名脚本家 笠原和夫が残したプロットを現代に蘇らせたというのはアツいです。
豪華な俳優の熱演が素晴らしく、特に仲野太賀の最後の立ち回りが良かったです。
社会的弱者をメンバーにして、ラストまで繋げる展開は良かったです。
豪華キャストが集結し、白石監督が描く時代劇です。一定の面白さが約束された作品です。
是非、本作をもう一度観て、確かめてください。
いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。