当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります。
是非最後までお付き合いください。
では、行きましょう!
●映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の概要
●映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の見どころ
●映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』のテーマ解説
●主人公が勤める血液銀行について解説
●映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の推しポイント!
●映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の惜しい点
【鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版】と通常版との違いについては、こちらの記事をご覧ください
感想については、あくまで個人的な見解、考察ですのでご容赦ください。一部ネタバレを含む表現がありますので、ご注意ください。
〈おススメ度〉
★★★ ☆ 3.5/5
〈ファーストインプレッション〉
● バディものとして良かったです。中盤以降は今時らしいヒーローアクションアニメでした。
● 血は一杯出ますが、妖怪もの特有の怪奇的な怖さはなく、期待していたイメージと違いました。
● 妖怪はあまり活躍しませんでした。
〈ポジティブ感想〉
● 鬼太郎のみならず、それ以外の水木しげる作品のエッセンスを上手く取り入れながら、今のテレビシリーズのファンにも違和感なく観られる映画に仕上がっています。
● 脚本がよく練られている優れた作品だと感じました。
● 大人向けの内容に振り切っている点は好感が持てます。
● 人間が持つ欲望の愚かさや醜さがよく描けており、反戦映画としての価値もあると思います。
〈ネガティブ感想〉
● 妖怪より人間がメインになっているところは残念でした。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』はどんな映画なの?
2023年に劇場公開された『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 通常版』のリテイクバージョンだよ
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の概要
国民的アニメとなっている水木しげる原作の「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズのスピンオフ的な前日譚です。新生版は2023年に大ヒットしたアニメ映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」のリテイクバージョンで、特に映像と音がクオリティアップされています。
「劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!」の古賀豪が監督を務め、「マクロスF」の吉野弘幸が脚本、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の副監督・谷田部透湖がキャラクターデザインを担当しています。
声優陣には、鬼太郎の父を関俊彦、水木を木内秀信が演じる他、沢城みゆき、野沢雅子、古川登志夫らテレビアニメ第6期のキャストも集合しています。
上映時間は105分。レイティングはR15+です。略称は『ゲ謎』。
本作のざっくりあらすじです
あらすじ
鬼太郎と目玉おやじは今は廃墟となっている哭倉村(なぐらむら)に足を踏み入れた。その村は目玉おやじにとって運命の出会いがあった地だった。
昭和31年、哭倉村は日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族が支配していた。帝国血液銀行に勤める水木は、龍賀家の当主・時貞の死の一報を受けて、会社から密命を背負って村を訪れる。一方、行方不明の妻を捜すため謎の男も村へやって来ていた。龍賀一族では、時貞の跡継ぎを巡って醜い争いが繰り広げられる中、一族の者が惨殺される事件が発生。裏鬼道衆によって、犯人として捉えられた謎の男を監視することになった水木。ゲゲ郎と名付けられた謎の男と水木の2人は、それぞれの目的のために協力して謎を解くことを約束する。しかし、その事件は龍賀一族の闇による恐ろしい怪奇が始まる前兆に過ぎなかった。
といった筋書きです。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の評判はどうなの?
通常版より真生版の方が評価が上がっているよ
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の評価
真生版(2024年)の評価
Filmarks 4.0p
映画.com 4.0p
通常版(2023年)の評価
Filmarks 3.9p
映画.com 3.8p
非常に好評で、高評価されています。真生版の方が評価が少し高くなっており、ファンから好意的に受け止められているのがわかります。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』はどんなことを描こうとしているの?
人間の愚かさや家父長制の禍々しさ、虐げられてきた者たちの怨念を描きながら、その裏に反戦の意思を感じるね
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』テーマ
ショッキングでセンシティブな重いテーマを持った大人向けの作品です。
水木しげるは作品の中で、人間の業、醜さ、恐ろしさ、禍々しさ、愚かさを描きました。その根底には自身の戦争体験があります。
本作は水木の戦争感を作品に落とし込んでおり、家父長制、搾取構造、軍国主義、自国中心主義、権力に対する嫌悪が描かれています。
妖怪は自然の中に在るものです。自然への畏怖の表れです。人間は自然を破壊し続けています。妖怪が人間に悪さをするのは、妖怪たちの抵抗なのかも知れません。
本作では、自然界の化身である妖怪たちの哀れな運命と怨念が描かれます。恐ろしい力を持つ狂骨も被害者です。その中で人間側に居る水木と、自然=妖怪(幽霊族)の側に居るゲゲ郎がバディとなって、その怨念を晴らします。
脚本の吉野氏は「親世代の負の遺産を子世代が解決する」という発想があることを語っています。物語には、実の親(ゲゲ郎)と育ての父(水木)、そして次世代である鬼太郎の姿を通して、“継承”によって妖怪より身勝手でおぞましい人間の過ち(戦争や自然破壊)を、次の世代が晴らしてくれるという裏テーマを感じました。
主人公の水木は血液銀行っていう会社に勤めてるけど、それってどんな銀行なの?
銀行といってもお金を扱うんじゃないんだ
血液銀行は昭和中期に存在した輸血血液を供給する機関のことだよ
いろいろと問題があって現在では無くなったんだ
血液銀行について解説
血液銀行とは、予め採血しておいた血液を保存し、必要に応じて間接輸血(保存血輸血)のために供給する機関のことをいいます。 日本で最初の血液銀行は1951年(昭和26年)に開業され、その後各地に開設されました。
当時の日本には献血をした人に対してお金を支払う「売血」という制度がありました。民間企業が「血液銀行」を運営し、そこで一般の人々にお金を払い、輸血用などの血液を集めていました。
売血の買値は400ccで約1200円ほどだったそうです。昭和30年頃の1円は現在の約10円程度の価値があったとされていますので、売血で得られるお金は、現在の貨幣価値に換算すると1回10000円以上にもなったということがわかります。
「売血」はかなりの需要があり、1962年(昭和37年)当時、日本で外科的手術に使用される保存血液量の内、99% は「売血」によるものだったといいます。さらに当時は手術に必要な血液は、患者個人が高額で買うものでした。あらかじめ健康な時に血液を預けておき、本人や家族などに輸血が必要となったときに払い戻しを受ける「預血制度」という方法もありました。
このような背景から、貧乏な人が日銭欲しさに売血をするということが頻繁に行われるようになりました。
売血の問題点
●「黄色い血」と呼ばれる粗悪な血液が出回るようになる。「黄色い血」は金銭を得るために赤血球数が回復しない短期間で、過度に売血を繰り返す者たちの血が黄色く見えたことによる。
●血液を買い取る血液銀行と売血者のモラルは低く、採血前検査も不十分で、貧血や肝障害、感染症を無視して雑な売血が横行していた。
●覚醒剤の静脈注射が蔓延していた低所得層の肉体労働者たちが売血に来ており、注射針の使いまわしなどによりウイルス性肝炎感染が広がっていた。このため医療現場では輸血後に肝炎を合併するケースが頻発した。
●売血者集めは暴力団の資金源になっていた。
ライシャワー事件
そのような環境の中、ライシャワー事件が起こります。1964年(昭和39年)にライシャワー駐日アメリカ合衆国大使がアメリカ大使館ロビーで刺されて重傷を負います。手術時の輸血により、大使は一命をとりとめましたが、この輸血が元で輸血後肝炎に罹ってしまいます。
この事件がきっかけになり売血問題がクローズアップされます。
輸血用血液事業は日本赤十字社が独占し、血液は献血により調達されることが同年に閣議決定されました。
売血から献血へ
1969年(昭和44年)に売血が終息。
1974年(昭和49年)に預血制度が廃止され、輸血用血液が完全に献血由来のものに切り替わます。
1990年(平成2年)になって、最後の民間製薬会社2社による国内での有償採漿が中止されました。
売血が日本で完全に無くなったのは、実に1991年(平成3年)以降なのです。
「墓場鬼太郎」においても、貧困にあえぐ(後の)鬼太郎の母が売血に行って、その血液を輸血された患者がおかしな状態になるという話が出てきます。水木が所属する血液銀行はかなり問題がある組織だったのです。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』はどこが良かったの?
水木作品のオマージュが上手く取り入れられていたのは良かったね
ポジティブ感想
● 閉鎖的な村で起こる土着因習的ミステリーの雰囲気が良かったです。横溝正史風の舞台からサイコホラーに展開していきます。怖さより、エグさの方が強調して演出されていました。
● 自然や背景がとても美しく描写されていました。物語舞台の雰囲気を高めていると共に、「妖怪=自然界」というテーマにも通じています。
● タバコの表現が上手く使われていました。登場人物たちはよくタバコを吸います。咳をする少女の前でも平気でタバコをふかします。とても昭和らしいです。「昔は良かった」という単純な美化とは距離を置く、作り手のリアルに対する姿勢を感じます。
● ゲゲ郎は一見飄々としていますが、アツい信念があってヒーロー的な行動をとるというキャラ付けは、平成・令和の鬼太郎シリーズに近く、新しいファンも違和感なく観られるようになっています。また男性同士のバディものというのも、女性ファンに受け入れやすいと思います。
● 中盤の中盤のテラスでのアクションは、ダイナミックで迫力がありました。作画担当は東映アニメーションの太田晃博。流動的な描線が多用され、明らかに絵のタッチが変わります。この手描きのアクションは、動きを自分たちでアナログで実際にやってみて、それを基にアニメーターがほぼひとりで描いたのだそうです。
● ラスボスや外道陰陽師集団・裏鬼道などのヴィランが、しっかり胸くそキャラだったのもわかりやすくて良かったです。ラスボスの異様さは、いい意味で気持ちが悪かったです。
● 最終的に次世代にである鬼太郎が、時弥の霊も生仏させるところがテーマに合っていました。
● 本作はオリジナル脚本ですが、主人公の戦争体験など水木作品のオマージュが上手く取り入れられていました。
● エンドロールで『墓場鬼太郎』の鬼太郎の誕生シークエンスが映し出されます。そして最後にタイトルが出ます。鬼太郎の誕生と水木作品の誕生のダブルミーニングとなっていて、上手い演出だったと思います。原作通り水木が鬼太郎を育てるという所も、テーマに重なっていました。
● 鬼太郎の父は昔から風呂好きだった、というのがわかって楽しかったです。ちゃんちゃんこが誕生した理由が幽霊族の怨念によるものだった、というのもわかって納得しました。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』は残念なポイントはあったの?
人間物語が中心で、妖怪が妖怪らしい悪さをしないのは残念だったかな
ネガティブ感想
● グロさはありますが、妖怪らしい奇っ怪さやおどろおどろしい怖さはありませんでした。この点は一番期待していた部分なので、非常に残念でした。
● 妖怪の多くは狡猾で、人間の欲望や心の隙間に乗ずるように取り憑き、悪さをします。本作は妖怪より人間ドラマに重きが置かれていて、妖怪はあまり出てきません(出てきますがほとんど活躍しません)。妖怪らしい悪さをする場面がほとんどないのは残念でした。
● 妖怪ならではのバトルはありません。終盤の巨大狂骨は、妖怪というよりも『劇場版 呪術廻戦 0』に登場した「呪術廻戦特級過呪怨霊・祈本里香」を連想しました。パワーバトルになり、妖怪らしさがなかったのは残念でした。
● ラスボスはボールに閉じ込められているだけで、「天罰が下る=地獄に落ちる」というような恐ろしさが描けていないと感じました。
● 自然描写は美しかったのですが、CGっぽさがあり、水木作品の雰囲気や本作のテーマに合っていないように感じました。
● 誕生譚ですから、仕方ないのですが鬼太郎はほぼ出ません。タイトルはシンプルに「ゲゲゲの謎」にして、誕生したシーンで「鬼太郎誕生」と裏タイトルを出した方がエモかったと思います。
● 雰囲気はミステリーで「ゲゲゲの謎」というタイトルになっていますが、謎解き要素はありません。
● 中盤のテラスでのアクションシーンは、明らかに絵柄も動きもポーズも違うので違和感がありました。
● クオリティは高めですが、最近のアニメの中でずば抜けて高い訳ではありません。
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』のおすすめポイントまとめです
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』の推しポイントまとめ
いろんな方向に目配せされ、脚本がよく練られている優れた作品です。鬼太郎以外の水木しげる作品のエッセンスを上手く取り入れながら、今のテレビシリーズのファンにも違和感なく観られる映画に仕上がっています。
大人向けの内容に振り切っている点は好感が持てます。その中で人間と幽霊族のバディものやアクションものとして楽しめました。
人間が持つ欲望の愚かさや醜さがよく描けており、反戦映画としての価値もあると思います。
本作は「血」にまつわる物語であるため、リテイクで「血」の表現がさらに強調されていて、大人向けならではの作品になっている点が評価できます。しかし本来の「ゲゲゲの鬼太郎」の怖さはスプラッター的な表現とは別物だと思うので、その恐怖表現の方向性には疑問が残りました。
真生版と通常版では、内容や上映時間に違いはありませんでした。リテイクによって一部の表現が変更されていますが、その違いはファンでないとわからないレベルでした。
妖怪より人間がメインなところや、期待していた怪奇ものとしてのおどろおどろしい怖さがないところは残念でした。
是非、本作をもう一度観て、確かめてくださいね。
いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。