映画【侍タイムスリッパー】観れば応援したくなる!もう一度観たくなる解説&感想

引用元:侍タイムスリッパー : ポスター画像 – 映画.com (eiga.com)

当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります
是非最後までお付き合いください。

では、行きましょう!

この記事でわかること

●映画『侍タイムスリッパー』の概要
●映画『侍タイムスリッパー』のおもしろさ
●映画『侍タイムスリッパー』の解説
●映画『侍タイムスリッパー』の楽しみ方
●映画『侍タイムスリッパー』の推しポイント!
●映画『侍タイムスリッパー』の惜しい点

結論!

<おススメ度>


ポジティブ感想
インディーズ(自主制作)のSF時代劇コメディです。『カメ止め』現象のように口コミで広がり、今年の映画界のトピックになっています。
● 劇映画としてエンタメに徹していて、受け入れやすい内容になっています。
● 低予算映画ですが、クオリティは高いです。
● 意外に有りそうで無かったシナリオになっています。
● キャラクターは個性的で、キャストの演技もとてもいいです。
映画愛、時代劇リスペクトに溢れており、時代劇を舞台にしたストーリーの中に、普遍的なメッセージが込められています。
● どこか懐かしさを感じる雰囲気があります。観れば応援したくなる作品で、どんな人にもお勧めできます

ネガティブ感想
● 過度な期待値をあげて観ない方がいいです。クオリティが高いといっても、インディーズはインディーズです。そういう目線で観ると物凄く拾い物感があって、得した気分になります

ゴマ

侍タイムスリッパーはどんな映画なの?

こま

自主制作のSF時代劇コメディだよ。とても話題になっているよ。

目次

映画【侍タイムスリッパー】の概要

インディーズ(自主制作)SF時代劇カルチャーギャップコメディです。略称は「侍タイ(さむたい)」。
現代の時代劇撮影所にタイムスリップした幕末の侍が、時代劇の斬られ役として奮闘する姿が描かれます。
監督は安田淳一。主演は数々の時代劇に出演してきた山口馬木也。共演は冨家ノリマサ沙倉ゆうの 他。
自主制作作品でありながら、東映京都撮影所の特別協力を受けて撮影されました。
上映時間は131分。インディーズとは思えない長さです。レイティングはGです。

映画【侍タイムスリッパー】の評価

Filmarks 4.1p 、映画COM 4.3p。
非常に高い評価となっています。巷の評価も「とても面白かった」という感想が多いです。

映画【侍タイムスリッパー】の興行成績

2024年09月末時点で興収1億円を突破しています。インディーズ映画としては大ヒットといえますが、『カメ止め』は制作費300万円で最終31億円超の興収でした。本作もまだまだ伸びて欲しいですね。

映画【侍タイムスリッパー】のあらすじ

幕末の京都の夜。密命を受けた会津藩士・高坂新左衛門が標的である長州藩士と刃を交えたその時、落雷により気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。江戸幕府が140年前に滅んだことを知り愕然とする新左衛門。一度は死を決意したものの、親切な人々に助けられ、彼は少しずつ現代に慣れ元気を取り戻していく。やがて新左衛門は磨き上げた剣の腕を頼りに、“斬られ役”として生きていこうと撮影所の門を叩くのだが。

という感じの筋書です。

以下、少しネタバレに触れますので、ご注意ください。まだ観ていない方は、鑑賞後にこの先を読むことをおススメします。

ゴマ

自主制作作品だけに苦労もあったんだろうね

こま

企画が生まれてから公開までに7年かかっていて、最初は1館だけの上映からはじまったんだよ

映画【侍タイムスリッパー】の公開まで

エンドロールを見ていると、自主製作らしくスタッフが何役もこなしているのがわかります。安田監督自身も監督以外に脚本・撮影・照明・編集・他11役をこなしています。助監督役の沙倉ゆうのは、ホントに助監督も務めています。

企画は2017年からあり、プロットは30分で書いたそうですが、映画の完成・公開までは7年かかっています。追加撮影なども行い、完成が遅れ公開が1年延びたそうです。安田監督のあだ名は「サグラダ・ファミリア」(なかなか作品が完成しないから)だそうです。

8月17日〜の池袋シネマ・ロサの単館上映から、川崎チネチッタでの上映へ。さらに全国へ139の劇場での拡大公開が決定。『カメラを止めるな!』(2017年)の再来かと話題になっている作品です。ネットや口コミで話題になり、時代劇ながら若い人が観に行っています。

拡大上映のスピードが速いので、「カメ止めを意識している」と話していた監督の狙い通りといった感じでしょうか。『カメ止め』の時は、筆者が2018年6月にシネマ・ロサで観てから話題になって全国拡大されるまで、約2~3ヶ月以上はかかったと記憶してます。あの時も「まさかあの映画がこんなになるとは」を実感しました。

YouTubeには、かなり前から制作情報やメイキング映像などがあがっていますし、ヒロイン役兼助監督の沙倉ゆうのが自ら紹介動画をいくつも作っています。俳優へのインタビューも撮影期間中に行われているところから、しっかり戦略的に宣伝しているのがわかります。

ゴマ

この映画にはどんなテーマが込められているの?

こま

滅びることが決まっていてもそれは今じゃない!というアツいメッセージを感じるよ

映画【侍タイムスリッパー】のテーマ

時代劇への想いが乗った作品です。時代劇へのリスペクトを感じます。現代の人に時代劇を観る感覚を追体験させる作品になっています。コメディにすることで、レトロなものを現代的にアップデートしています。

滅びることが確定している武士と斜陽となっている時代劇がリンクしています。「失われていくものがあり、いつか忘れられる日がくるかもしれないけれど、それは今ではない」というメッセージが込められています。設定はトリッキーですが、テーマに普遍性があります。

監督はインタビューで「時代劇、ものづくりをしている人への讃歌。(本作は)困難な状況にある人が、諦めないで自分のもっていること、出来ることを懸命に研鑽して、新しく人生を築いていくという話」と語っています。「時代劇の衰退と滅びゆく侍が上手くリンクしているが、意識して脚本にしたわけではなく、偶然が重なった」。「昭和の時代の映画館の雰囲気を再現したかった」とも話しています。

現代においてもいずれは忘れ去られていく文化や人々。『トップガン マーヴェリック』でトム・クルーズがいうセリフ「だとしてもそれは今日じゃない(But not today)」と同じ精神です。これは今を頑張る中高年世代への讃歌とも捉えられます。

ゴマ

どんな俳優が出ているの?

こま

超有名俳優はいないけれど、主演の山口馬木也をはじめ、脇の面々もとても魅力的だったよ

キャストと演技について

冨家ノリマサ、紅萬子、井上肇など見たことがある俳優もチラホラ出ていますが、超有名な役者はいません。ですがキャストも演技もとても良かったです。

高坂新左衛門役の山口馬木也はとても良かったです。ホントに侍が来たように感じる芝居でした。男らしい顔立ちですが、ちょっと可愛いコメディ演技が良かったです。既にNHK大河ドラマにも出ている役者さんですが、これで一気にブレイクするのではないかと思います。

主人公新左衛門は「洋服が似合わない = 武士」になりきっています。敵の風見は現代に来て長いので洋服が似合っています。細部に至る役作りが素晴らしいです。

ヒロイン優子役の沙倉ゆうのも魅力的でした。新左衛門が惚れるのも分かります。メガネ姿がとてもチャーミングでした。メガネフェチの方にも人気が出そうです。

ゴマ

この映画を観て、どこが良かった?

こま

楽しくて、ハラハラ。クライマックスは手に汗握ったよ。自主制作とは思えないクオリティだったね

映画【侍タイムスリッパー】のポジティブ感想

大道コメディがベースの時代劇エンタメです。時代劇は衣装も小道具も揃えなければならず、非常にお金がかかります。しかも完全オリジナル作品。インディーズ映画としては物凄いチャレンジです。
時代劇とはいえ、ほとんどが現代のシーンです。時代劇ではない時代劇映画です。予算的にも、この設定は非常に上手いと思いました。

スタッフ10人程で作ったインディーズ(自主制作)作品です。でもインディーズのレベルではありません。低予算映画ですが、低予算感は少ないです。特に映像は安っぽさがなく、自主制作映画の画ではありません。手作り感はあるものの、商業映画としてかなりのクオリティだと思います。『カメ止め』より本作の方が劇映画としてはしっかりしています。
「シナリオが良かったから」という理由で東映京都撮影所が協力していることが大きいです。7・8月は撮影所が空いていたので、自主制作映画でも使わせてもらえたのだそうです。

新左衛門が現代に来た時点では、着物の上の方が汗でぐっしょり濡れています。リアリティを追及するスタッフのこだわりに恐れ入ります。とてもインディーズ映画とは思えません。

本物の侍が現代にやってくるというギャップコメディです。それだけなら中学生でも考えそうなネタです。突飛な話ですが、世界観が納得できるように構築されています。タイムスリップという突飛さを除けば、意外に無理がない展開になっています。ここで無理繰りな展開になると気持ちが離れてしまいますが、本作はそういうことはありませんでした。しっかり時間を使って、観客が違和感を持たないように丁寧に展開を進めています。その点でもよく練られた優れたシナリオだと感じました。

登場人物はそれぞれキャラが立っていて魅力的です。基本的に悪いやつは出てきません。気持がいい人物ばかりなので、観ていても嫌な気持ちになりません。侍2人は人間的且つ現代的で、現代の人たちは記号的でベタな感じのコメディキャラとして描かれている点が面白いです。

新喜劇的なベタなボケツッコミが随所に出てきます。昔ながらの定番のボケなので、安心して見られます。特にお寺夫妻のやり取りは完全なお茶の間コメディです。東京の役者さんも混ざっていますが、関西弁が自然でした。筆者は大変楽しかったですが、関西弁のやり取りは好き嫌いがでるかも知れません。コメディですが、時代劇を茶化していません。コントっぽいやり取りも安っぽく感じません。

殺陣シーンは素晴らしかったです。いわゆるチャンバラですが、静と動がしっかり入っていて殺陣が流れません。最初に主人公は真剣を使っていますが、切られ役になってから竹光に変わります。そして最後にまた真剣を使います。これを演技で本当に使っているようにそれぞれ演じ分けている点も素晴らしかったです。ここも非常にメタ的でした。コメディですが、クライマックスはおちゃらけずに真剣に真剣勝負をやっています。それまでのテレビ的な殺陣から、クライマックスは映画的な殺陣になる点にも注目です。

新左衛門は現代の誰にもタイムスリッパーであることを言いません。無理に隠したりもしません。元の世界にもどろうともしません。非常に潔いです。バレるかバレないかみたいな余計な展開はありません。主人公はとても順応性が高いです。直ぐ映画や切られ役というものを理解します。本物の武士なら「切られ役なんか出来るか」と言いそうなものですが、新左衛門はそんなことは言いません。素直に今の人として行きていくところはフレッシュです。それでも武士であったことは体が覚えています。稽古をつけてくれる師匠を何度も切ってしまうシーンはとても面白かったです。

会津藩士である設定がちゃんと活かされています。新左衛門は現代に通じる開国派ではありません。自分が信じてやってきたことが未来に全く役に立っていないことを知り、複雑な感情を持っています。新左衛門は得意分野を活かして現代で活躍するのかと思いきや、ずっと裏方に徹しています。惨めさ泥臭さを噛みしめる姿は、彼の生き様を表していています。そこに「敵(かたき)」が出現することで自分たちの想いを成仏させるために、真剣勝負を行います。影で2人だけで勝負せずに、映画の中で武士の文化を残そうとするのが面白いです。

坂本龍馬との撮影シークエンス。龍馬といえば銃です。剣で来るのかと思いきや、サッと銃を取り出して新左衛門を撃ち抜きます。本物の拳銃と勘違いして死を察した新左衛門は走馬灯のように過去を思い出します。タイムスリッパーである主人公の過去が出てくるのは、このシーンだけです。この展開は白眉だと思いました。監督よるとこの走馬灯シーンは、追加撮影でプラスしたのだそうです。

後半はドラマ性が上がり次第にシリアスになっていきます。そしてハラハラのクライマックスはブチ上がりました。緊張感の中、固唾をのんで観ました。ラストに主人公がどうしたのかを直ぐに見せないところも上手いです。

シリアスになり過ぎないようにバランスがとられています。ラストのラストはコメディで終わります。このオチはいい意味でインディーズらしいです。先に来た2人は斜陽の時代劇に助けられましたが、3人目のあいつはどうやって行きていくのか。気になります。

ラストのビンタシーン。平手をしてから、すぐに切り替えて助監督の顔に戻ります。『フォールガイ』の甘咬みラブコメシーンを連想しました。スタッフが役者の顔に手を出してはいけませんけどね。

ゴマ

残念なポイントもあったの?

こま

テンポ感はゆったりで今風ではないね。SEも少し気になったかな。

映画【侍タイムスリッパー】のネガティブ感想

自主制作映画にしては長いです。今風の小気味よいテンポではありません。どちらかといえばテレビドラマみたいなテンポ感です。ゆったりと進むので現代映画ばかり観ている人には冗長に感じるかも知れません。でも無駄なシーンは上手く省いています。ややダレますがなんとか観ていられる雰囲気があります。
例えば、主人公は比較的簡単に現代を受け入れます。現代に慣れていく行をもっとコメディにできたはずですが、それをバッサリ省いています。ですが編集はやや野暮ったいと感じます。もう少しカットしたら、もっとテンポが出たはずです。

ポスターは単館上映とは思えない出来栄えです。ですが背中を向けている侍らしき人物が雲を見上げているポスターは、アニメっぽくてもったいないと思いました。実際に筆者はアニメと間違えて、本作を観る動機にはなりませんでした。でも印象には残りました。

音の当て方に拘りは感じられますが、SE(サウンドエフェクト)は低予算感がありました。特に剣の効果音が気になりました。観客に真剣と竹光の違いを際立たせるためにわざと強調したのかもしれませんが、安っぽい音に感じました。

町を彷徨う新左衛門が、ポスターで幕末から140年も経っていることを知るシーン。その後にクドクドと他の人に聞いて回るようなシーンがないのは、スッキリしていて良かったですが、「おいおい、江戸時代の武士に算用数字は読めないだろう」とは思いました。文字を読む向きも、江戸時代は現代と逆ですし。

真剣を使って最後に芝居するシーンは少しだけ引っかかりました。演技の迫力に納得性はありますが、手放しで賞賛できる展開ではありません。アクション映画で本物の銃を使って撮影しましょうというのと同じです。そんな危険な撮影が許されるはずがありません。当然保険も入れるはずがありません。
実際に2021年に米ニューメキシコ州で撮影中だった西部劇映画「ラスト」のセットで、俳優アレック・ボールドウィン(当時65歳)が小道具の銃を誤射し、撮影監督が亡くなり、監督が負傷するという事件が発生しています。リハーサル中に安全だと言われて渡された小道具の銃から実弾が発射されたのでした。この事件では武器担当者が過失致死罪で有罪となっています。
この事件は直接本作には関係ありませんが、ドキュメンタリーではなく劇映画である以上安全を第一に確保するのはスタッフの役割です。裏方賛歌ともいえる作品なだけに、この点は少し残念でした。

エンドロールの最後に画面に「おわり」と出ます。コメディ映画としてはこれでもいいのですが、ここは時代劇の締めらしく「完」や「終」にしてほしかったです。

ゴマ

他にも面白い話しはある?

こま

本作は外国人にもウケがいいんだ。海外でもヒットするかもね

こぼれ話

クライマックスの睨み合いから始まる決闘シーン。素晴らしかったです。これは黒澤明監督の『椿三十郎』(1962年)オマージュですね。『椿三十郎』では、三船敏郎と仲代達矢の長い睨み合いの末に一瞬の居合いで決着がつきます。

安田淳監督は57歳。監督作品は3本目です。安田淳監督は米農家を営みながら映画監督をやっています。新左衛門がご飯に感激するシーンがありますが、米農家だからこそのお米リスペクトですね。
初号完成時の監督の貯金は7000円と少し。本作の制作には「地獄を見た」と語ったそうです。ヒットして良かったですね。

2023年第10回京都国際映画祭特別招待作品。2024年ファンタジア国際映画祭 観客賞金賞.その他にも今後世界の映画賞に出品予定です。
海外の映画祭では大ウケだったようです。その様子はYouTubeにあがっている動画でも見られます。

本作には一部劇場ではシーンを追加した「デラックス版」が存在します。川崎チネチッタでは、「デラックス版」が上映されました。

ゴマ

映画『侍タイムスリッパー』のおすすめポイントまとめです

映画『侍タイムスリッパー』の激推しポイントまとめ

SF時代劇コメディです。10人程のスタッフで作り上げたインディーズ映画で、『カメ止め』現象のように今年の映画界のトピックであり、“事件”になり得る作品です。インディーズですが、アート映画ではなく、小難しさはありません。劇映画としてエンタメに徹していて、受け入れやすく、老若男女誰でも分かる内容になっています。低予算のインディーズですが、クオリティは高いです。オーソドックスな笑いですし、タイムスリップもありがちですが、意外に有りそうで無かったシナリオになっています。

キャラクターは個性的で、キャストの演技もとてもいいです。

映画愛、時代劇リスペクトに溢れており、どんな人にもお勧めできる作品です。時代劇を舞台にしたストーリーの中に、「無くなる文化があったとしても、それは今日ではない」という普遍的なメッセージが込められています。
どこか懐かしさを感じます。監督が目指していた「昭和の映画館の雰囲気を再現」は達成していると思います。観終わったら、思わず拍手したくなります。観れば応援したくなる作品です。

但し、ヘンに過度な期待値をあげて観ない方がいいです。クオリティが高いといっても、インディーズはインディーズです。そういう目線で観ると物凄く拾い物感があって、得した気分になります

いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

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