当ブログでは皆様の映画選びの一助になる情報と感想をお届けしております。
この記事を読めば、あなたもきっとこの映画を何度も観たくなります。
是非最後までお付き合いください。
では、行きましょう!
●映画『フォールガイ』の概要
●映画『フォールガイ』のおもしろさ
●映画『フォールガイ』の解説
●映画『フォールガイ』の楽しみ方
●映画『フォールガイ』の推しポイント!
●映画『フォールガイ』の惜しい点
<おススメ度>
<ポジティブ感想>
● 見どころ満載のご機嫌なポップコーンムービーであり、スタントマンあがりの監督が撮ったスタントマン讃歌です。
● 裏方スタッフへのラブレターであると同時に、我々庶民へのエールでもあると感じました。
● シンプルでとても見やすく、CG全盛で貴重になってきた生身のアクションが存分に楽しめます。特にクライマックスは痛快です。
● 本作の目的はスタントマンの地位向上。ハリウッド映画業界に一石を投じる内容とエンタメを合わせたユニークな作品になっています。しかもそのメッセージを、大仰ではなく軽いコメディタッチで描いているところが気持ちいいです。
● 昔のテレビドラマの雰囲気を持ち、オフビートな笑いや懐かしさ、大味な雑さが持ち味になっています。
<ネガティブ感想>
● アクション大作を期待しすぎると、期待外れという感想を持つ人もいるかも知れません。またオフビートな外し笑いや甘噛みラブコメが好みでない人には合わないかもしれません。
『フォールガイ』はどんな映画なの?
スタントマン出身であるデビッド・リーチ監督が、スタントマンの活躍を描いたアクションコメディだよ
映画【フォールガイ】の概要
『ブレット・トレイン』や『ワイルド・スピード スーパーコンボ』のデビッド・リーチ監督が、ライアン・ゴズリングとタッグを組んだ痛快アクションコメディです。
自身もスタントマン出身であるリーチ監督が、危険な陰謀に巻き込まれたスタントマンが持ち前のスキルを駆使して戦う姿を描きます。
エミリー・ブラント、アーロン・テイラー=ジョンソンらが共演しています。
上映時間は127分。レイティングはGです。
映画【フォールガイ】の評価
米ロッテントマトでは、トマトメーター 81%、ポップコーンメーター 86%。
Filmarks 4.0p 、映画COM 3.9p。
概ね高めの評価となっています。『エイリアン ロムルス』と似ている評価ポイント数ですね。
映画【フォールガイ】の興行成績
全米では、週末3日間の興行収入が2850万ドルを突破し、初登場No.1を記録。2024年4月末の全世界興収は約1億7,837万ドル(約264億円)となっています。しかし本作の制作費は約1億3000万ドルと言われていますので、制作費に対して大ヒットとはいえない状況です。
『フォールガイ』のざっくりあらすじです
映画【フォールガイ】のあらすじ
スタントの失敗で大怪我を負い、一線から退いていたスタントマンのコルトは、元恋人のジョディが監督を務める作品で撮影現場に舞い戻ることになる。これを機にジョディとの復縁とスタントマンとしてのキャリアの復活を狙うコルトだったが、主演俳優のトムが突如失踪してしまい映画の製作が危うくなってしまう。プロデューサーから依頼され秘密裏にトムの行方を追うことになったコルトは、思いもよらぬ事件に巻き込まれていく。
という感じの筋書きです。
以下、少しネタバレに触れますので、ご注意ください。
『フォールガイ』はどんな特徴があるの?
映画内映画を作るというメタ構造の中で、トッププロによる生身のスタントが楽しめるよ
映画【フォールガイ】の特徴
スタントマンがテーマの作品だけに、ほぼCG無しでの生身のスタントが見られます。それもド派手なやつから定番まで様々な妙技が楽しめます。
現場のプロの映画です。実際にこの映画のために、プロのスタントマンがスタントしているというメタ構造になっています。“サムズアップ”はスタントマンの安全とプライドを示します。サムズアップで指を立ててヘリから落ちるシーンは最高にかっこいいです。
本作はスタントマンだけでなく、その他のスタッフにも焦点を当てます。映画はチームで作るのだというがよくわかります。
80年代映画の大味映画の雰囲気と楽しさがあり、むしろ懐かしさを感じます。
本作は『俺たち賞金稼ぎ!! フォール・ガイ』(1981〜1986年)というアメリカのテレビドラマを元ネタにしています。
リー・メジャース主演で5シーズン作られた人気作。日本では2シーズンだけ放映されました。といってもリメイクという程ではありません。タイトルと一部の登場人物名、スタントマンが主人公という以外はほぼオリジナルです。
タイトルはテレビドラマからの引用ですが、スタントマンの仕事や人生からの“転落”と画的な“落下”とがかかっています。またスラングで、「犠牲者」や「身代わり」という他人の罪を背負わされる人という意味もあり、なかなか深い意味を持ったタイトルです。
映画の製作現場の映画なので、色んな映画の小ネタやオマージュ、メタファーが満載です。それを探すのも楽しみ方のひとつです。
『フォールガイ』は何を描こうとしているの?
本作はコメディだけど、真の目的はスタントマンの地位向上なんだ
映画【フォールガイ】のテーマ
バスター・キートン、ハロルド・ロイド、チャーリー・チャップリンなどの大スターが並ぶ無声映画時代から現在に至るまで、スタントアクションは映画の歴史そのものです。しかし米アカデミー賞ではスタントは特殊効果のひとつになっていて、スタントに対する単独の賞はありません。つまり映画に対する貢献度が非常に大きいにも関わらず、世間的な評価はそれほど高くないのが現状です。
そこに一石を投じたのが本作です。本作は映画界でのスタントマンの立ち位置を示した作品であり、スタントマンの地位向上が目標になっています。スタントマンの本気を示した映画であり、同時に昨今のCG全盛時代にチクリと疑問を呈する作品でもあります。
2024年の米アカデミー賞でライアン・ゴズリングとエミリー・ブラントが出てきてスタントを讃える動画を流して敬意を表するシーンがありましたし、ライアンは以前『フォールガイ』を「オスカーにスタント部門を設立するための一大キャンペーン」と発言していました。その甲斐あってか、米アカデミー賞ではスタント部門の創設を検討しているようです。現在の映画界はCG全盛で生身のスタントの立ち位置も意味も変わってきました。そういう時代だからこそスタントの評価や価値が大きく変わるかも知れません。
キャストについて
本作は主演2人のスター映画にもなっています。
ライアン・ゴズリングのコメディセンスや「ハンサムだけどダメな感じ」が活かされています。女々しさや可哀想な役が似合います。ライアン扮するコルトのアクションは4人のスタントダブルが務めていますが、ライアン本人も実際に落下スタントなどをこなしています。
エミリー・ブラントは、今まで強くて怖いというイメージで、今まであまり印象に残りませんでしたが、本作のエミリーは非常にチャーミングです。
ジャン・クロードという名前のワンちゃんが大活躍します。名前に由来してフランス語にだけ反応するというのも面白かったです。コルトとのバディ感もとても良かったです。
『フォールガイ』はどんなところが面白いの?
凄いスタントアクションの中に、オフビートなおかしみや懐かしい感じがするところだね
映画【フォールガイ】のポジティブ感想
スタントを活かしたアクションが満載の娯楽大作です。スタントマンに対する愛があり、彼らにエールを送る作品になっています。
遊び心があり、サービス精神に富んでいます。主人公が落ち込むシーンもありますが、いちいちシリアスになりすぎない軽さが魅力です。
映画を製作する映画というメタ構造の映画になっていて、映画の裏舞台が描かれます。その手作り感と熱量が伝わってきます。映画にはスタントマンや裏方スタッフがいて製作されていて、本作の製作にも沢山の裏方がいることがわかります。クライマックスではスタントマンだけではなくスタッフもちゃんと活躍します。主役とプロデューサーをスタッフたちが追い詰めます。つまりスタッフが主役の映画なのです。
エンドロールで流れるメイキング映像は非常に良かったです。グッときました。
エミリー・ブラント扮するジョディは監督に成り、主人公コルトをしばきます。プロデューサーも女性です。この設定はまだまだ男性中心のハリウッド映画界への批判が込められていると感じます。
スターのトム・ライダーの顔を主人公コルト・シーバースの顔に変えて罪をなすりつけるシーンは、脇役を主役に変えるというメタシーンであり、AIやフェイシャルキャプチャーを使った映画作りを批判するという意味もあります。
ストーリーは多少グダグダ感がありますが、十分に楽しいです。
オフビートなおかしみや話が進まない面白さがあります。ギャグは狙い通りちゃんと滑っています。このオフビート感が合わない人もいるかも知れません。筆者はケラケラと笑っていました。特にユニコーンのシーンは大好きです。
甘咬みラブコメシーンが結構続きます。ここは好みが分かれるかもしれません。コルトがジョディに何回も燃やされて、全員の前で拡声器で痴話げんかするシーンで「ああこういう映画なんだな」と分かります。私はタルさがありながらも、懐かしさを感じながら微笑ましく観ていました。
巻き込まれ型サスペンスですが緊張感は持続しません。ミステリー部分ももったいぶらず中盤辺りで真犯人がわかります。そこをやりたい作品ではないんですね。
『フォールガイ』に残念なポイントはあるの?
本作の持ち味であるオフビートな外し笑いや痴話喧嘩コメディが好きではない人にも合わないかも知れないね
映画【フォールガイ】のネガティブ感想
物語はヘンです。でもその歪さが面白味になっています。笑いがスベります。こういうオフビートな外し笑いが好きでない人には合わない作品かも知れません。甘咬みの痴話喧嘩コメディが好きではない人にも合わないと思います。
この映画をダサいとか、ヌルいとか、古いとかいう人もいるかも知れませんが、それこそが持ち味の映画になっているので仕方ありません。わざとエモく描いていないのです。
どこか惜しいという感じは正直あります。まあそこも80年代映画っぽいです。
何も考えないで楽しめる作品ですが、何かを得ようとか細かいことを考える人には合わないと思います。
主役と裏方が対立し、仲違いしたまま主役とプロデューサーに仕返しするだけの最後に終わっています。そういう意味では裏方讃歌だけど映画讃歌にはなってはいません。こういう内容にしたのはそれだけ裏方のうっぷんが溜まってるということなのかなとも思います。
主役と裏方が仲直りして作品を作るというプロットでも良かったかも知れませんが、そうするとライアン・ゴズリングがやるライアン・ゴズリングの映画になってしまいます。あくまで本作はスター俳優が演じる裏方の話にすることに意義があるのだと思います。
本作ではスター俳優とスタントマンのお互いのリスペクトも描かれていません。大物俳優はスタッフへのリスペクトがしっかりあるんでしょうけど、実際は酷い態度の俳優やプロデューサーも一杯いるんだろうなと思わされます。恐らくそこに光を当てる目的もあるのだと思います。スタントって素晴らしい、だけでは終わっていない作品なんですね。
スタントマンから有名俳優になった人も沢山います。俳優とスタントダブルの両方やっている方はどう考えてるんでしょう。
肝心のスタントシーンは今まであったスタントの凄いやつ(拡大版)という感じです。特別な新しい体験はありません。それを期待して観に行くと「そうでもなかったな」という感想になるかもしれません。本作は新しいことにチャレンジすることより、生身の演技の魅力を活かした既存のアクションの楽しさや凄さ、爽快さを目指したのだと思います。予算の関係もあったかも知れませんが。
トム・ライダーの部屋にいた刀女が何の役割だったのかよくわかりません。刀アクションがしたかったのはわかりますが、あとは次に行く場所を指示する役割だけでしたね。
劇中映画『メタルストーム』は、「真昼の決闘のSF版だ」という説明でしたが、どう見てもジェイソン・モモアが出てくるシーンは全然『真昼の決闘』ではありません。
モモアはコルトとは体型が違い過ぎて、コルトのスタントが使えなくなってしまいます。これは如何なものかと思います。
他にも面白い話題はある?
本作に出てくる「キャノンロール」というカーアクションはギネス世界記録を樹立したんだよ
こぼれ話
『俺たち賞金稼ぎ!! フォール・ガイ』の主演だったリー・メジャースとヘザー・トーマスがカメオ出演しています。
リー・メジャース主演のテレビドラマ『600問ドルの男』(米 1973年~1978年)毎週楽しみに観てました。最初は『サイボーグ危機一髪』(日本 1974年~)というタイトルで放映してました。女性版の『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー』(日本 1977年~)も面白かったです。当時はアメリカのドラマがテレビで沢山放映されていました。
本作には「キャノンロール」というカースタントアクションが出てきます。走行する車から地面に向けてキャノン砲(大砲)を打ち、その反動で車両を横転させる大技です。これまでは『007 カジノ・ロワイヤル]』(2006年)での7回転が世界記録でしたが、本作では2台目のチャレンジで8回転半に成功。見事ギネス世界記録となりました。メイキング映像では、スタッフが狂喜している様子が見られます。
スタントマンにもそれぞれ得意分野があって、本作のライアン(コルト)のスタントについても、落下スタント、格闘&武道、カーアクション、パルクールや炎などそれぞれのエキスパートが担当しています。
劇中にデヴィッド・リーチが妻と設立したアクション映画の制作会社「87ノース・プロダクションズ」の名前がしれっと出てきてました。
劇中の選曲は良かったです。この映画が目指す世界観が現れている気がします。
オープニングは、KISSの「I Was Made For Lovin’ You」(1979年)のヤングブラッドによるカバー。ヤングブラッドは、アニメ『怪獣8号』のオープニング・テーマである「Abyss」でも人気です。
コルトが車中で涙を流しながら聴くテイラー・スウィフトの「All Too Well」は、2012年リリースされたアルバム「Red」に収録されている曲です。
ジョディがカラオケで歌うのは、フィル・コリンズの「Against All Odds(見つめて欲しい)」(1984年)です。このシーンではエミリー・ブラントの歌が聴けます。私もサビを一緒に歌っちゃいました。
ちなみに劇中に出てくる『メタルストーム』というタイトルの映画は、1983年公開の本当にあったSFアドベンチャー映画です。デヴィッド・リーチ監督がインタビューで明かしてます。本作内では大評判になっていましたが、実際の『メタルストーム』は、非常に評判が悪く、興行も大コケしました。
映画『フォールガイ』のおすすめポイントまとめです
映画『フォールガイ』の推しポイントまとめ
見どころ満載のご機嫌ムービーであり、スタントマンあがりの監督が撮ったスタントマン讃歌です。とても映画愛&裏方スタッフへのリスペクトを感じます。
主人公コルトは「お前らの身代わりはいくらでもいる」と言われます。それはスターではない私たち庶民も同じ。本作はスタッフへのラブレターであると同時に、我々へのエールでもあると感じます。
シンプルでとても見やすいです。CG全盛で貴重になってきた生身のスタントアクションが存分に楽しめます。
ポップコーンムービーですが、しっかりとしたテーマを持ち、それが確実に観客に伝わる構造になっています。
本作のテーマはスタントマンの地位向上。ハリウッド映画業界に一石を投じる内容とエンタメを合わせたユニークな作品になっています。しかもそのメッセージを、大仰ではなく軽いコメディタッチで送るところが気持ちいいです。
元ネタである昔のテレビドラマの雰囲気を再現したかったのだと思います。そう考えればオフビートな笑いも、選曲も、懐かしさも、大味な雑さも理解できます。
トレーラーでアクションばかりを期待しすぎると、「ちょっと違ったな」という感想を持つ人もいるかも知れません。
またオフビートな外し笑いや甘噛みラブコメが好みでない人には合わないかもしれません。
前半は多少のグダグダ感はありますが、最後は痛快爽快になれます。
お酒を飲みながら何回でも観れるような作品です。途中から観ても楽しめるので、午後ローにもピッタリですよ。
いかがだったでしょうか。
ぜひもう一度この映画を観ましょう!
そこにはきっと気付かなかった感覚や楽しさ、新しい発見があると思います。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。